子ども達の世界
お外遊びが終わった頃、教務課の前で一つの虫かごを取り合っている二人の年中さん、UくんとHちゃんの姿がありました。
どうやら虫かごの持ち主はUくんなんだけれど、Hちゃんが「生き物コーナーにお片付けするの!」と、両者の意見がぶつかっている様子。
朝登園したUくんは、「カエルを捕まえてきた。3くんと4くんという名前をつけたんだ」と私に見せにきてくれたことを思い出し、二人の間に入り、「この虫かごはUくんのものなんだよ。おうちで捕まえた2匹のカエルをみんなに見せたいって持ってきてくれたんだよ」と説明すると…
Hちゃんがポツリと「幼稚園のだと思った。中にいたカエルなら1匹逃がしちゃったよ。」。
それを聞き、慌てて虫かごを確認するUくん。確かにカエルの姿が1匹見当たりません。
「名前もつけてたのに…」と泣き出すUくん。
このやり取りを見ていた数人の子どもたちが、カエルの大捜索をはじめました。
カエルを逃がしたとウッドデッキの汽車の遊具近辺を捜索するも、カエルの姿は見当たりません。
すると、みんなの口から様々な意見が飛び出します。
「カエルは色が変わるから違う色になってるかも。もう緑じゃないかもしれないから気を付けて探して!」
「これ、カエルの足跡じゃない?この足跡を辿れば、カエルにたどり着けるんじゃない?」
確かにウッドデッキには小さな水滴があり、見様によってはカエルの足跡にみえなくもありません。
辿っていくと、途中で途絶えています。それを見て…「うーん、足跡はここまでかぁ。もしかして飛んだ?」
足跡の近くで落ち葉のようなものを見つけると…「これ、カエルの皮じゃない?」
「水を出しておけば寄ってくるんじゃない?」と、水道の蛇口をひねり水を出す子もいれば、
汽車に登っては「僕上から見てるけど、この辺にはおらんわ。」様々な角度から次々とアイデアが飛び出します。
「みんなでゲロゲロ言えば、寄ってくるんじゃない?」年少から年長まで年齢を超えてみんなでゲロゲロの大合唱がはじまったり、
「カエルたちが僕たちに襲われるときに捕まえるのはどう?」という興味深い提案に、思わず「どうやったら襲うためにカエルをおびき出せるの?」と聞くと…「カエルみたいにみんなでジャンプするのはどう?」
必死でカエルを探すみんなの姿を見て、逃がした責任を感じたのかHちゃんがまたまたポツリ…「カエルさん死んじゃうかと思って逃がしちゃったの」
そこに飛び出した年長のRくんの言葉。「よし、俺が明日家からカエル持ってきたる!」
みんなが自分のためにカエルを探してくれる姿が嬉しかったからか、Hちゃんの優しい心に触れたからか、心強いRくんの言葉からか、涙が止まり嬉しそうなUくん。
子どもたちの口から次から次へと出てくる表現や考えが面白く、一つ一つの言葉に想いや意味が込められていて、子どもたちの優しさや魅力を感じたカエル探しの時間でした。
私たち大人が口を挟むまでもなく、自分たちで考え、想いをぶつけあい解決していく子どもたち。
みんながどんどん考えを出し合うと、僕も!私も!と、積極的に意見が飛び出します。幼稚園という場所が、そういった自分らしさを発揮出せる環境でありたいと思いました。
自分らしくいられる環境と、そばで子どもたちを見守ることが大切なんだな、と子どもたちから教えられた出来事でした。