わかばのかぜ~園長からのおたより~

命を育てること

2021.09.16

「カブトムシは夏が終わると死んじゃうって分かってるのに、どうして幼稚園で飼ってるの?」
と、1人の年長さんから尋ねられました。

必ず死んでしまうことが分かってるのに、どうして飼育するんだろう。
死んでしまっても、どうしてまた飼育するんだろう。

幼稚園では、子どもたちみんなで生き物のお世話をしています。エサをあげたり、掃除をしたり、水を替えたりと、様々なお世話をしなければ生き物はすぐに死んでしまいます。責任が伴いますが、心を尽くしてお世話をすると、どんな小さな命にも愛着が湧いてきます。そして、卵を産んだり、姿を変えて蝶になったりなどの変化がみられると、目の前で起こる命の不思議に喜びやちょっとした感動を覚えます。

ですが、必ず終わりがやってくるのが生き物の命です。虫かごの中でひっくり返り、動かなくなっている姿を子どもたちが見つける事もあります。

以前、こんなことがありました。
みんなでお世話をしているアゲハのサナギが羽化し、いよいよチョウとなって羽ばたこうとしたとき、羽化に失敗して羽が伸び切らず、飛ぶことが出来ませんでした。飛ぼうと何度ももがくように羽を動かすのだけど、結局最後まで飛べずに、死んでしまいました。
「どうしてなのかな」「かわいそう」と子どもたちと話すなかで、命の儚さや一生懸命生きる事の大切さをアゲハに教えてもらいました。

身近に飼育する生き物の変化や死によって、命について学んでいく経験を積み重ねていってほしいと思います。

子どもたちは時折、冒頭のような、私たちが思ってもみない質問をしてきます。私たちがこれまでの経験や固定概念から気づかない事も、子どもたちは気づき、教えてくれます。子どもたちがその瞬間に感じた気持ちに共感できたり、寄り添って真剣に考えて答えを一緒に導き出す保育者でありたいと考えさせられます。

「リリ、リリー」
最近は、虫かごでエンマコオロギが鳴き、秋の訪れを知らせてくれています。
短い羽根を震わせて鳴いているコオロギを囲んで子どもたちと会話をし、生き物を通じて喜びや不思議な気持ちを子どもたちと共有しています。

夏が終わり、カブトムシは死んでしまいましたが、たくさんの卵を産み、命をつなげてくれました。
土の中から出てきた小さな卵や幼虫に、大興奮の子どもたちでした。