命がつながったよ!
「せんせい、カブトムシがしんじゃってるよ!みんな動かないよ。」
夏が過ぎ、9月に入ったある日、年中組の子ども達があわててお話に来てくれました。
「ゼリーをあげても誰も食べに来ないの。」
あんなに元気いっぱいだったカブトムシ。しかし、オリンピックが近づいた9月初めころから急に静かになり、私たちも「弱ってきたのかな?」と思っていた矢先のことでした。
生き物当番でお世話をしているみんなは、カブトムシがゼリーをあっという間に食べてしまうことを知っています。なので、朝も帰りもいつ見に行っても、ちっとも減っていかないゼリーを見て、心配してくれていたようです。
死んでしまったカブトムシたちをみて、子ども達も私も、さみしさと共にひとつの疑問が残っていました。
「カブトムシたち、どうしてこんなにばらばらになってしまったの?」
そこで、子ども達と一緒に、虫博士の園長先生に尋ねてみました。
すると、「それはね・・・」と、とってもわかりやすく教えてくださった園長先生。
「きっと他にもカブトムシの事を心配してくれているお友達が沢山いるに違いないから、みんなに教えてもらおう!」ということで、子ども達のランチタイムに『カブトムシのお話』を放送していただくことになりました😊
「カブトムシはね、約一か月くらいしか生きることが出来ないんだよ。メスのカブトムシは卵を産んだらすぐ死んじゃいます。オスのカブトムシもね、卵を産む準備をしたら、すぐ死んでしまいます。だいたい、8月の終わりから9月ころになるとね、カブトムシはみんな死んでしまうんだよ。
カブトムシはうまれて一年間しか生きられないんだよ。短い間だけど、子どもを産むために一生懸命頑張って生きています。それで、幼稚園のカブトムシもみんな死んじゃったんだけど、くびが取れちゃっているよね。みんな見たことあるかな?
実はね、カブトムシの体っていうのは3つに分かれています。オスのカブトムシでいうと角がある部分を「アタマ」、目がある部分を「ムネ」と言うよ。一番大きな部分をお腹(ハラ)っていうよ。カブトムシはムネとお腹のつないでいる部分が、すご~く薄いので、死んじゃうと、そこの部分がはがれてしまい、アタマが取れちゃったような姿になってしまいます。かわいそうだけど、いじめられているわけでもないし、ケンカしたわけでもなく、自然にあのような姿になるんだよ。
先生は、これから死んでしまったカブトムシのお墓を作るから、みんな安心してね。その後、今度は、みんなで、虫かごの中の土をひっくり返してみようと思います。するとね、小さな卵がいっぱい出てくると思うよ。
みんなでこの夏に育てたカブトムシが産んだ卵、そして幼虫をまたみんなで育てて、来年の夏にカブトムシになっていくのを楽しみにしていようね。」
なるほど・・・!カブトムシの命の長さはだいたい決まっていて、体のつなぎ目が薄いから自然にばらばらに離れてしまうんだね。
園長先生のお話を聞いて、ホッとした子もいたんじゃないかな?その日の帰りには、カブトムシの虫かごを何人も見に来ていましたよ。
早速、9月20日に、年長組のみんなでブルーシートの上に土をひっくり返してみました。すると・・・
「あっ!!幼虫がいた!」
「うまれてる、うまれてる!!」大歓声があちこちから上がりました😊
小さな小さな真っ白の卵。
そーっと手にのせて、「ちっさい・・・」
すでに、幼虫もたくさん生まれていましたよ!
「死んで終わりじゃなかったね。」「きれいな透明色の身体だよ。」
カブトムシの命が、つながったね。
久しぶりの幼虫を触ることが出来て、子ども達の心はドキドキわくわく💕
「幼虫、ピカピカだね。」「かわいいなぁ・・・」
この時、子どもたちの姿を見ていて、発見したことがひとつ。
幼虫を見つめる子ども達の眼差しが、愛情であふれていて、とっても優しい目をしていました。毎日のように虫のお世話をして、その命にじかに触れているからこそ、新しく生まれた命の誕生をこんなに温かく迎え入れてくれるんだな・・・と、嬉しくなりました。
今回、「はじめて、幼虫さわれたよ!」と興奮して話してくれる女の子も。
うんうん、それってすごい成長ですよね😊
新しくつながった命をそっと抱っこした子ども達。
「大きくなりますように・・・」と無事育つように祈りながら、大好物の腐葉土がたっぷり入った虫ケースの中に・・・
そーっと幼虫や卵を寝かせ、土をかぶせて、お引越しが無事に終わりました。
幼虫たちも、お母さんカブトとは離れてしまったけれど、ふわふわの美味しいごはんがいっぱいのお部屋できっと喜んでいることでしょう。
次のお父さん、お母さんは、幼稚園のみんなだね。
お母さんカブトから「かわいい子ども達をおねがいしますね。」と託された、ピカピカ輝く小さな命を、またみんなで大切に育てていこうね😊
💕おまけの『ぽかぽかエピソード』💕
少し前のことです。小さなカブトムシの幼虫を見ていた年少組のお友達が、早速、昆虫ゼリーをもってきて「えさだよ!」と一生懸命にゼリーのフタをめくろうと頑張っていました😊
それを見た年中組のお兄さんたちが、「ゼリーはカブトムシが大好きで、幼虫は土なの、土。土を食べるの。」
年少組さん「土じゃないよ!ゼリー食べるんだよ。」
一生懸命説得したけど、納得いかない年少組さんに・・・
年中組の二人「じゃあ、食べさせてみ。」
フタをとったゼリーの上に幼虫をのせてみるけど、全然動かない様子。
年中組の二人「先生、土、ちょうだい。」
虫ケースに新しい腐葉土をいれて、幼虫を入れてみると・・・幼虫が動き出しました。
年少組さん「ほんとや・・・。」
その時の年中組の二人の得意げな顔といったら😊
なんとも心温まるひとときでした。