絵本『いのちをいただく』
園長先生は、普段から子ども達に『命の尊さ』について語りかけています。また給食の時には、みんなで合掌してこんなご挨拶をしています。
『おおくのいのちと みなさまのおかげにより このごちそうにめぐまれました ふかくごおんをよろこび ありがたく いただきます』
そんな子ども達に、【いのちをいただく】という絵本・紙芝居の読み聞かせを行っています。これは、食肉センターに勤めて実際に「命を解く」ことを仕事にされている、坂本義喜さんのおはなしです。
あらすじを簡単にお話しすると、
『牛の命を解いて、お肉にする。坂本さんはこの仕事がずっといやでした。人々にとって大切な仕事だということはわかっていても、牛と目が合うたびに、仕事がいやになり、いつか辞めたい、という思いを抱えていました。
そんなある日、息子のしのぶ君は、参観日で、先生からお父さんの仕事の大切さについて教えられ、その仕事の偉大さを理解します。息子の理解に励まされ、仕事を続けようと決意した坂本さんでしたが、一匹の牛と女の子に出会います。泣いて別れを惜しむ女の子の姿に、「この仕事はやめよう。もうできん」気持ちが揺らぐ坂本さんに、しのぶくんがある言葉をかけます。
翌日、坂本さんは牛のみーちゃんの命を解くのでした。その時、みーちゃんの目から涙がこぼれました。』
「みいちゃん、ごめんねぇ。」と、女の子が生まれた時からずっと一緒だった『牛のみいちゃん』との別れを悲しむ場面や、みいちゃんが涙を流す場面では、子ども達の目もきらり。。
お話がおわると、お部屋が静まり返り、最後まで真剣に見ていた子ども達。紙芝居を読み終わったあと、「どんなふうにおもった?」ときいてみると、「かわいそうだった。」「残さず食べようと思った。」「わたしも。」「ぼくも。」
子ども達は、それぞれの心に感じたことを、思い思いにお話ししてくれました。
いろいろな気持ちがあったのでしょう、帰り際にもう一度、「かわいそうだった」と話しに来る子もいました。
この紙芝居を読んでいた、ちなつ先生がこんな風に話していました。「みんなが大好きな、給食のハンバーグやから揚げ、おいしいよね。あれは坂本さんみたいなお仕事をしてくださる人がいるから食べられるんだね。お肉だけじゃなくて魚も野菜もフルーツも、みんなはそのいのちをたくさん食べて元気になり大きくなってきたんだね。」
「みんなが毎日食事の前にいっている「いただきます」ってとっても大事な言葉だね。」
子ども達は、食事が終わるとみんなで合掌し、『とおといおめぐみを おいしくいただき おかげでごちそうさまでした』と言っています。絵本は少し難しいお話でしたが、最後まで目を逸らさず、真剣にきいていたみんな。翌日お部屋をのぞきに行くと、しっかりと手を合わせて合掌している姿が印象的でした。
今は、お腹が空けばすぐ行けるコンビニやスーパーが身近にあります。物が溢れる飽食の時代を生きる私達にとって、食べ物に感謝をしていただくことは、子ども達だけでなく、大人にとっても大切なことだと再確認できたように思います。
『命』とは、とても大切で とても難しいテーマですが、これからも、子ども達にとって 身近な存在である絵本や紙芝居などをきっかけにしながら、食育だけでなく、あらゆる方面から「命の尊さ」について考える機会をつくり、ともに考えていきたいと思います。